大切な人との最後の別れの場である告別式。そんな厳粛な場で、私たちは故人への敬意と遺族への思いやりを込めて香典を贈ります。
実は、香典には守るべきマナー、金額の相場や注意点、香典袋の正しい書き方、包み方や渡し方まで…知っておくべきことが数多くあります。
この記事では、告別式の香典に関する基本マナーと知識を、わかりやすく解説。金額の決め方から香典袋の書き方、さらには郵送する場合のマナーまで、しっかりとお伝えしています。
この記事を読み終えると、遺族の方々への配慮も忘れない、そんな心温まる香典の贈り方を身に着けることができるでしょう。
香典の基本マナーとは?
香典の意味と役割
香典とは、故人を偲び、遺族を慰めるために贈る金銭のことです。故人が生前に遺族のために尽くしてくれたことへの感謝の気持ち、そして、残された遺族への励ましの気持ちを表すものです。香典は、故人との関係性や親密度によって金額が異なり、金額によって故人への敬意を表すという側面もあります。
香典を渡すタイミング
香典を渡すタイミングは、一般的には葬儀・告別式に参列した際に、受付で渡します。ただし、故人との関係性や地域によっては、事前に遺族宅へ持参する場合や、後日郵送する場合もあります。香典を渡すタイミングについては、事前に確認しておくと安心です。
香典袋の購入場所
香典袋(不祝儀袋)は文房具店やコンビニ、スーパーなどで手に入れることができます。事前に購入しておくことをおすすめします。
告別式で渡す香典の金額相場について
親族の場合の相場
香典の金額は、故人との関係性によって異なります。親族の場合、一般的には1万円から5万円が相場とされています。 故人との関係性や親族間の慣習によって金額は変動する可能性があります。例えば、兄弟姉妹の場合は、1万円から3万円程度、叔父叔母の場合は、1万円から2万円程度が相場とされています。 また、故人が高齢であったり、長年お世話になっていた場合は、金額を多めに包むこともあります。
会社関係の場合の相場
職場や仕事関係の場合は、3千円から1万円程度が目安です。チームや部署でまとめて渡すこともあります。 会社の規模や故人との関係性によって金額は異なります。規模の大きい会社の場合、上司や同僚は1万円程度、部下は5千円程度を包むことが多いです。 また、チームや部署でまとめて香典を包む場合、金額は事前に相談して決めるのが一般的です。
友人・知人の場合の相場
友人や知人であれば、5千円から1万円程度が相場とされています。 親密な友人や長年付き合いのある知人の場合は、1万円程度を包むのが一般的です。一方、あまり親しくない友人や知人の場合は、5千円程度でも失礼にはあたりません。 故人との関係性や親密度によって金額を調整しましょう。
20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | |
---|---|---|---|---|---|
親 | 3~5万円 | 5~10万円 | 5~10万円 | 10万円 | 10万円 |
祖父母 | 1万円 | 2~3万円 | 3~5万円 | 3~5万円 | 3~5万円 |
おじ・おば | 1万円 | 1~3万円 | 1~3万円 | 2~3万円 | 2~3万円 |
兄弟姉妹 | 3~5万円 | 3~5万円 | 3~5万円 | 5~10万円 | 5~10万円 |
親戚 | 5千~1万円 | 5千~1万円 | 1~2万円 | 1~2万円 | 1~3万円 |
職場関係 | 3千~5千円 | 3千~5千円 | 5千円 | 5千円 | 5千円 |
友人やその家族 | 3千~5千円 | 5千円 | 5千~1万円 | 5千~1万円 | 5千~1万円 |
近所の人 | 3千~5千円 | 5千円 | 5千円 | 5千~1万円 | 5千~1万円 |
あくまでも相場なので、香典の金額は故人との関係性や付き合い、自分の年齢によって変わります。
香典の金額の注意点
香典で包んでいけない金額
香典を包む際には、避けたほうがよい金額があります。まず、偶数の金額は控えるのがマナーです。偶数は2で割り切れるため、「縁が切れる」ことを連想させ、「縁起が良くない」と考えられています。そのため、3千円、5千円、1万円、3万円などの奇数の金額を選ぶようにしましょう。
さらに、「4」や「9」を含む金額も避けるべきです。これらの数字は忌み数とされており、4は「死」、9は「苦」を連想させます。縁起を重んじる日本の風習では、これらの数字を含む金額は不適切とされています。
香典の金額は偶数や忌み数を避けた奇数の金額を選ぶようにしましょう。
新札、ピン札を香典に包むとマナー違反?
香典に新札やピン札を包むのは、マナー違反とされています。理由は、新札は事前に用意しないと手に入らないため、「不幸を予期していた」「この日を待ち望んでいた」といった印象を与えるからです。香典は故人への哀悼の意を表すものなので、突然の不幸に対応するという意味合いが重要です。
とはいえ、だからといってボロボロの古札を使うのも良くありません。軽く使用感のある綺麗なお札を使うのが理想です。もし新札しか手元にない場合は、一度折り目をつけてから包むことで問題ありません。新札を避けるという伝統的なマナーを理解しつつ、適切な心遣いを大切にしましょう。
お札の向きに注意
お札の向きは、物画のある表を香典袋や中袋の後ろに向けて、人物画の位置を下にして入れるようにしましょう。
香典袋の書き方とポイント
香典袋の表書きの書き方
香典袋(不祝儀袋)の書き方には、いくつかのポイントがあります。まず、外袋には、表書きと名前を記載します。表書きは宗教やタイミングによって異なり、仏教の場合、49日以内は「御霊前」、それ以降は「御仏前」と書きますが、浄土真宗の場合は「御仏前」を用います。神道では「御玉串料」や「御榊料」、キリスト教では「御花料」や「御ミサ料」といった表書きを使います。
名前は外袋の下段に記入します。個人で出す場合はフルネームを書き、夫婦の場合は夫の名前の右隣に妻の名前を記載します。三人以上で出す場合、三人までは全員の名前を記載し、四人以上なら代表者の名前を中央に書き、他の参加者は「外○名」や「一同」とします。
香典袋の書き方(薄墨使用)
香典袋は通常、薄墨の筆ペンを使用して表書きします。サインペンで代用する場合は、目立たない色を選びましょう。 薄墨を使用するのは、故人を悼む気持ちを表すためです。黒インクや濃い色のインクは、慶事の場合に使うため、弔事では避けるようにしましょう。
急な訃報で筆ペンが準備できない場合は黒色のサインペンを使っても問題はありません。なお、ボールペンや鉛筆は簡易すぎるため、失礼にあたるので避けるようにしましょう。
中袋の書き方
中袋の表側の金額の数字は、「金壱万圓」もしくは「金壱萬円也」、「金参万圓」もしくは「金参万圓也」のように「旧漢数字」を使って「縦書き」で袋の中心に書きます。数字の改ざんを防ぐために数字は、壱(一)、弐(二)、参(三)、伍(五)、拾(十)、阡(千)、萬(万)を使います。
中袋の裏側には、郵便番号、住所、名前(フルネーム)を書きます。書く場所は、袋の中心から左側に寄せて書きます。
なお内袋は、濃い色のペンを使って書きます。
香典の包み方と渡し方
香典を包む際は、香典袋をそのまま持参せず、袱紗(ふくさ)という布で包んで持ち運ぶのがマナーです。袱紗は香典袋がしわや汚れにならないように保護する役割を果たします。
袱紗の色には、弔事用と慶事用の区別があり、弔事用には寒色系(紫、藍色、鼠色など)が使われます。中でも紫色は慶弔両方に使えるため、便利な色です。
袱紗の包み方は、袱紗の中央からやや右寄りに香典袋を表側が上になるように置き、右→下→上→左の順に包みます。右側のはみ出した部分は内側に折り込みます。現在は、ポケットタイプの袱紗も普及しており、正式なものとして受け入れられています。
【袱紗(ふくさ)の包み方】
- 袱紗をひし形になるように広げ、中央右寄りに香典袋を表向きに置きます。
- 右側から内側にたたみます。
- 下から内側にたたみます。
- 上から内側にたたみます。
- 最後に左側を折って端を裏側に回して完成です。
祝い事の場合は逆に包むため、弔事と混同しないように気をつけましょう。
香典を渡す際のマナー
香典を渡す際には、お悔やみの言葉を添えるのが基本的なマナーになっています。
式場に到着したら、まず受付に向かい、「この度はご愁傷様です」といった挨拶をしてから袱紗(ふくさ)を開き、香典袋を渡します。香典袋は、受付の方から見て正しい向きに差し出しましょう。
多くの方は一礼のみで済ませることもありますが、以下のようなお悔やみの言葉を述べるとより丁寧です。
「このたびは、誠にご愁傷さまでございました。どうぞ御霊前にお供えください。」 「このたびは、お気の毒さまでございました。どうぞ御霊前にお供えください。」
宗教によって適切な言葉が異なる点にも注意が必要です。例えば、浄土真宗では「ご冥福をお祈りします」は使用しないため、「お悔やみ申し上げます」などの言葉が無難です。お悔やみの言葉は短く、簡潔に述べるようにしましょう。
- 受付でお悔やみの言葉を述べます
- バッグから袱紗を取り出します
- 袱紗を右手のひらに置き、左手で袱紗を開きます
- 相手から表書きが読めるように香典袋を反時計回りに回し向きを変えます
- 畳んだ袱紗を台代わりにして香典袋をのせます
- 袱紗にのせた香典袋を受付の人に向けて両手で手渡しします
芳名帳に住所と氏名を記入する
香典を渡し終えたら、芳名帳に住所と名前を記載します。
個人で参列される場合は、自身の住所と名前を書きます。
夫婦や家族で参列する場合は、夫婦それぞれが「氏名」で記入する場合や、夫婦が並んで書き込むこともあります。そのとき、夫が先に記入した場合は妻が横に「氏名」を書きますが、「氏」は「〃」にして「名」だけ書くといったこともあります。
家族で参列をするときは、基本的には全員の名前を書くことが多いです。
香典を郵送する場合のマナーについて
1. 香典を送ってよいか確認する
葬儀後に香典を郵送する前に、必ずご遺族に香典を送ってもよいか確認しましょう。ご遺族が香典を辞退している場合もあるため、確認を怠るとご迷惑をかけることがあります。
2. 現金書留で送る
香典を郵送する場合は、必ず現金書留を利用してください。現金を普通郵便で送るのは違法です。香典袋に現金を入れ、それを現金書留用の封筒に入れて郵送しましょう。
3. 添え状を同封する
香典と一緒に、謝罪やお悔やみの言葉、ご遺族への労わりを記した**添え状(手紙)**を同封するのがマナーです。手紙は長くならないよう1枚にまとめ、忌み言葉は使わないように注意しましょう。
4. 郵送するタイミング
香典は、できるだけ早く郵送することが望ましく、1週間以内に送るのが理想です。遅くとも1か月以内に届くように手配しましょう。また、現金書留で日付指定が可能なため、通夜や葬儀の日に合わせて会場に直接送ることもできます。
5. 忌み言葉を避ける
手紙や添え状には、縁起の悪い「重ね言葉」や生死に関する直接的な表現などの忌み言葉は使わないようにしましょう。宗教によっても適切な表現が異なるので、慎重に選びます。
6. 香典袋の選び方と表書き
香典袋は、黒白の結び切りの水引で、無地の白い封筒を選ぶのが無難です。表書きは薄墨で「御霊前」と記すのが一般的です。薄墨は悲しみを表すためのもので、筆や筆ペンを使って書くのが礼儀とされています。
これらのマナーに気を付けて、香典を郵送する際には注意しましょう。
まとめ
今回は、香典のマナーや決まり事について紹介しました。香典はもともと相互扶助の精神から生まれたものです。故人の冥福を心から祈り、遺族をいたわるのが、周囲にいた人の役目です。まずは香典の正しいマナーを踏まえて悲しみの気持ちを表し、故人を贈ることが大切です。ご遺族もまだ悲しみが癒えない状態ですので、失礼のないように心がけましょう。