- 神式の葬儀はどんなことをするの?
- 神式の葬儀と仏式の葬儀の違いを知りたい
- 神式葬儀のマナーって?
神式葬儀については知らないことや疑問に思うことがあるという方も多いのではないでしょうか。
もし神式葬儀に初めて参列するという場合は、神式葬儀の知識や知っておくべきマナー、仏式葬儀との違いなどを詳しく紹介しますので、この記事を参考にしてみてください。
神式葬儀とは
神式葬儀(神葬祭)は、日本固有の宗教である「神道」に基づいて行われる葬儀です。仏教の葬儀が故人の冥福を祈るのに対し、神式葬儀では故人を家の守り神として祀ります。これにより、故人は神々の世界へ帰り、子孫を見守る存在になると信じられています。親が亡くなった悲しみの中で、彼らが私たちを守り続けるという考え方は、大きな慰めとなります。
神式葬儀のもう一つの重要な目的は、「穢れ(けがれ)」を祓うことです。穢れとは、不幸や災厄といった悪い状態を指します。葬儀を通じて、この穢れを取り除き、日常の平穏な生活に戻ることを目指します。
神式葬儀には独自の儀礼があります。例えば、榊(さかき)の枝を使った清めの儀式や、神主による祝詞(のりと)などが行われます。これらの儀式は、故人を敬い、家族の未来を守るために欠かせないものです。仏教のように葬儀によって亡くなった方を極楽浄土へ導くもとは形式は異なり、今後不幸なことが起こらないようにという願いが込められた子孫繁栄のためのものです。
神式の葬儀と仏式の葬儀の違い
神式葬儀と仏式葬儀の違いは、それぞれの信仰する宗教の違いに基づいています。各宗教の独自の教えや思想に従って行われるため、儀式の内容や形式も異なります。
1. 死生観の違い
神式葬儀(神葬祭):死者は神様(守り神)になり子孫を守り続ける
神道に基づく神式葬儀では、故人が神々の世界に戻り、家族や子孫を守る存在、つまり家の守り神になると信じられています。故人は祖先神として祀られ、家族の繁栄と守護を願う儀式が行われます。この信仰により、死後も家族との繋がりが続くと考えられています。
仏式葬儀:死者は仏になり冥界へ旅立つ
仏教に基づく仏式葬儀では、故人の冥福を祈り、極楽浄土に導くことを目的としています。故人が輪廻から解脱し、安らかな来世に旅立つことを願う儀式であり、死後の安息を願う点が特徴です。
2. 儀式の目的
神式葬儀:神式葬儀の主な目的は、故人を家の守り神として祀ることと、穢れ(けがれ)を祓うことです。葬儀を通じて不幸や災厄といった悪い影響を取り除き、家族が再び平穏な生活に戻れるようにすることが重要視されます。
仏式葬儀:仏式葬儀の目的は、故人の魂が安らかに成仏するように祈ることです。また、故人の功績を称え、生き残った家族がその教えや生き方を学ぶ機会でもあります。戒名の授与や読経など、故人が正しく仏の道を歩むように導く儀式が行われます。
3. 葬儀の形式と儀礼
神式葬儀の特徴
- 榊(さかき)の枝を使った清めの儀式
- 神主による祝詞(のりと)の奏上(子孫の繁栄を故人とともに祈るという目的で祝詞を唱える)
- 諡(おくりな) 亡くなった方の本名の後ろに、生前の実績などを諡として書き足します
- 故人を祀るための神棚の設置
- 玉串奉奠(たまぐしほうてん)という、玉串を捧げる儀式※玉串とは、榊などの木の枝へ、紙垂(しで)や木綿(ゆう)をつけたもののこと
- 葬儀の場所はお寺ではなく、斎場や亡くなった方の自宅で行う
仏式葬儀の特徴
- 僧侶による読経(亡くなられた方の冥福をお祈りし、お経を唱える)
- 戒名の授与(亡くなった方が仏門へと入門した証として、死後に本名とは別の戒名を授かります)
- 焼香や供養の儀式(お通夜や告別式等で、一人ずつ祭壇前で香をつまみ、くべる行為)
- 故人の遺影や位牌を用いた祭壇の設置
- 葬儀の場所は斎場や、お寺、亡くなられた方の自宅で行う
4. 喪の期間と行事
神式葬儀:喪の期間は通常短く、四十九日や百箇日のような法要は行われませんが、年忌祭と呼ばれる記念日には故人を祀ります。
仏式葬儀:四十九日や一周忌、三回忌など、定期的に故人を供養する法要があります。これにより、遺族は故人を偲び、仏教の教えを再確認する機会となります。
神式葬儀のマナーは
日本古来の宗教である神道(しんとう)の儀式に従って行われる神式(神葬祭)の葬儀には、様々なマナーがあります。それに伴い参列する際のマナーも変わってきます。仏式葬儀に比べ神式の葬儀に参列する機会は少ないため、仏式葬儀のマナーとは異なる点に戸惑う方も少なくありません。ここでは、神式の葬儀マナーについて紹介します。
手水の作法
葬儀の前に参列者の身のけがれをを清める大切な儀式です。手順は以下の順になります。
- 右手で 柄杓 を持って水をくみ、左手は水を受けるような形で左手を清めます。
- 柄杓を左手に持ち替えて、右手を同じ様に清めます。
- 再び柄杓を右手で持ち、左手で水を受け、この水で口をすすぎます。 柄杓は直接口につけないように注意してください。
- 改めて左手を清めます。
- 残った水で柄杓の柄を洗い清め、最後に柄杓をもとの場所に戻します。
拝礼の作法
神式での拝礼は、「二礼二拍手一礼」という順番で行うのが一般的ですが、葬儀など弔事の柏手は両手を打つ直前で止めるようにし、音を立てないようにします。これを「しのび手」と呼びます。
- 背中を平らにし、腰を90度に折り、頭を2回下げます。
- 胸の高さで両手を合わせ、右指先を少し下にずらします。
- 肩幅程度に両手を開き2回拍手を打ちますが、両手を打つ直前で止めるようにし、音を立てないようにします。
- ずらした指先を元に戻し、最後に1回深いお辞儀をします。
玉串奉奠(たまぐしほうてん)の作法
神葬祭では焼香ではなく、玉串を捧げる「玉串奉奠」となります。玉串とは榊の枝に紙垂(しで)や木綿(ゆう)をつけた枝葉を祭壇に捧げます。
- 玉串を両手で受け取り遺族へ一礼し、斎主にも一礼します。(玉串は右手で上から枝の根元をつまみ、左手で下から葉を支えます)
- 玉串案と呼ばれる台の前へ進み、一礼をします。
- 玉串を正面に立てるように持ち、時計回りに90°回転させます。(左手を枝先に移動して、持ち手を変えます)
- 根元が祭壇側になるように置きます。
- 玉串を捧げたら「二礼二拍手一礼」を行いますが、柏手は「しのび手」(音を立てない拍手)を行います。
- 数歩下がって遺族、斎主にも一礼して戻ります。
香典ではなく、玉串料を用意する
仏式の香典は神式では玉串料(たまぐしりょう)」といいます。不祝儀袋は白黒もしくは双銀の水引があるものを使うのが一般的です。市販の不祝儀袋は表書きが印刷されて売っているものも多く、「御玉串料」、もしくは「御神前」「御霊前」をいずれかを選んでください。蓮の絵柄が印刷されたものは仏式の場合のみに使用されますので、選ばないように注意してください。
金額の相場は仏式と変わりありませんので、故人とのお付き合いの程度や自身の立場、年齢を考慮して包むようにしましょう。
故人との関係性 | 目安 |
---|---|
両親(配偶者の親) | 30,000円〜100,000円 |
兄弟姉妹(配偶者の兄弟姉妹) | 30,000円〜50,000円 |
祖父母(配偶者の祖父母) | 10,000円〜50,000円 |
おじ・おば | 10,000円〜50,000円 |
その他親戚 | 5,000円〜20,000円 |
友人・その家族 | 5,000円〜10,000円 |
会社関係者 | 5,000円〜10,000円 |
勤務先社員の家族 | 3,000円〜5,000円 |
隣人 | 3,000円〜5,000円 |
玉串料は新札を使うのは避けて、使用感があるしわの入った古札を使いましょう。手元に新札しかない場合は、一度折り目をつけてから包みましょう。
喪主が神主に謝礼として玉串料を納める場合は、不祝儀袋の表書きは「御祈祷料」「御礼」「御神饌料」「御玉串料」などが使われ、「黒白の結びきりの水引」を選びます。
服装について
服装のマナーについては、仏式と変わりありません。喪服を着用し、アクセサリーは極力外します。
男性: 黒のスーツ、白いシャツ、黒いネクタイ、黒の靴を着用します。靴下も黒に揃えます。
女性: 黒のワンピースやスーツを着用します。黒いストッキングや黒い靴を合わせ、アクセサリーは控えめにし、パールのものを使用することが一般的です。バッグも黒を基調とし、光沢のあるものや派手なデザインは避けます。
また派手なメイクや香水は控え、落ち着いた装いを心がけるようにしましょう。
仏式との決定的な違いは、数珠です。数珠はもともと僧侶が読んだ経の数を数えるために使っていたもので、神式葬儀では使いませんので注意しましょう。
言葉遣いのマナーについて
神式葬儀(神葬祭)での言葉遣いは仏式とは死生観異なり、哀悼の意を述べる一般的な「お悔やみ申し上げます」や「ご冥福をお祈りします」といったフレーズは使用しません。また、「冥福」や「成仏」、「供養」などの仏教用語は用いません。
お悔やみの言葉は、「御霊(みたま)のご平安をお祈りいたします」や「御霊(みたま)の安らかに鎮まり給うことをお祈り申し上げます」と表現するのが適切です。
神式葬儀(神葬祭)は故人が家を守る神となることを祈る儀式であることを十分に理解し、神葬祭にふさわしい立ち居振る舞いとなるように心がけるようにしましょう。
まとめ
多くの人が葬儀と聞いてまず思い浮かべるのは仏式のものですが、神道における考え方が強く反映される神式葬儀は、その形式が異なるだけでなく、儀式の意義も異なります。
神式葬儀である神葬祭に参列する際は、仏式の葬儀との違いを理解することが重要です。知らず知らずのうちにマナー違反となる行動を取らないようにするためにも、神葬祭の基本的な流れや服装、言葉遣いなどの特徴的なマナーについては事前の確認が必要です。
今回紹介した神葬祭の流れや作法・マナーをマスターし、故人の平安を心から祈るために、事前の準備を怠らないようにしましょう。