葬儀の基礎知識と準備

葬儀における宗派別の数珠の持ち方とは?マナーや扱い方も解説

数珠の持ち方
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宮坂
宮坂
数珠は葬儀には欠かせない仏具の一つですが、普段から使い慣れていないため、扱い方やマナーについて戸惑ってしまう方も多いのではないでしょか。

この記事では数珠の意味や宗派別の持ち方、気を付けなければならないマナーについて詳しく解説しています。

数珠の意味は

数珠

数珠(じゅず)は、通夜、葬儀、告別式などの焼香の際に使用される仏具で、複数の小さな珠(たま)に糸を通して輪状にしたものです。数珠は「念珠(ねんじゅ)」とも呼ばれ、もともとはお経や念仏を唱える際に珠を動かして回数を数えるための道具として用いられていました。この使い方から「数珠」という名前が生まれ、仏様を「念」ずる際に用いる「珠」であることから「念珠」とも呼ばれます。

数珠の起源は古く、紀元二世紀頃のインドにさかのぼります。仏教の伝播とともに中国を経て、八世紀頃に日本に伝来しました。当初は僧侶や貴族など限られた人々が使用していましたが、鎌倉時代に念仏による救いの教えが広まると、一般の人々にも普及しました。

仏様への信仰心の象徴とされている数珠は、仏様の世界とこの世の人々をつなぐ不思議な力を持つものと考えられています。仏教式の葬儀や法要では、故人への敬意や哀悼を表すために数珠を持つことがマナーとなっています。また、数珠を持っているだけで仏様のご加護があり、厄除けのお守りになるとされています。

数珠の珠の数には様々な種類があり、正式には108個の珠が使われることが一般的です。この108個の珠は、108の煩悩を表しており、一つ一つの珠を爪弾きながら数えることで煩悩を消滅させる意味があります。他にも、54個の珠や27個の珠で作られる数珠もあり、それぞれが特定の意味を持っています。

宗派によって数珠のデザインや形状が異なりますが、一般的な数珠は「略式数珠」と呼ばれ、宗派に関係なく誰でも使用できるものです。一方、「本式数珠」は各宗派によって正式なものとして定められた数珠で、珠の数や形状が宗派ごとに異なります。

数珠の材料には様々なものがあり、菩提樹の実や水晶、鉄、赤銅、真珠、珊瑚などが使われます。珠の材料やデザインによって数珠の種類は多岐にわたり、現在では約70種類もあるとされています。さらに、現代ではブレスレットタイプの数珠も登場し、より手軽に身に着けられるようになっています。

特別な意味を持つ大きな数珠も存在し、地方によっては「大数珠回し」という儀礼が行われています。これは、大きな数珠を人々が車座になって一つずつ回しながら念仏を唱える儀式です。

このように数珠は、仏教の信仰心を表すだけでなく、祈りや厄払いの際にも使用される重要な仏具です。

数珠の種類について

数珠には2つの種類があります。一つは宗教を問わずに使える「略式数珠」、もう一つは宗派ごとに決まっている「本式数珠」です。

正式な数珠の場合は108個の珠を連ねていますが、「略式数珠」は玉数に決まったルールはなく、それよりも量が少ない傾向にあり輪が一連になっています。一方、「本式数珠」は108個の珠からなり、そのため基本的には略式数珠よりも長く、宗派によっては二重にして使うこともあります。

略式数珠の持ち方

数珠持ち方

略式数珠の場合は、仏前で手を合わせる際に左手のみに数珠の輪を通す使い方と合掌した両手に輪をかけて通す使い方があります。片手、両手関係なく輪を掛ける時には、数珠の房が下へ垂れる持ち方をします。

・葬儀中は常に左手で数珠を持ちます。
・移動時は左手で数珠を持ったまま、数珠の房が下になるようにします。
・焼香時にカバン等から取り出すのはマナー違反です。

仏教では左手が仏様の世界を繋ぐ手と言われているため、常に左手首に掛けて持つようにします。

左手のみの場合(略式数珠)

左手の親指と人差し指の間に輪を掛けて合掌
(親指以外の4指が輪の中に通るようにする)

両手の場合(略式数珠)

合掌

両手の親指と人差し指の間に掛けて合掌
(8本の指を輪の中に通し、親指2本だけを輪の外に出す)

宗派ごとの本式数珠の持ち方

ほとんどの宗派では長い輪を二重にし、左手の親指と人差し指の間に掛け、房は下に垂らすして、そのまま合掌をしますが、そうではない宗派もあるので確認が必要です。

浄土宗の本式数珠の持ち方

浄土宗には2つの持ち方があります。

一つは、二重にした本式数珠を合掌した手の親指のみに掛け、房は手前真下に向けて垂らします。

もう一つは、両手を合掌し、二重にした本式数珠を4本の指から甲へ掛け、房は合わせた両手の甲の真下に向けて垂らします。

真宗大谷派の本式数珠の持ち方

二重にした本式数珠を合掌した両手の4本の指から甲へ掛け、その際に数珠を親指と人差し指の間ではさみ、房を左手側に垂らします。

浄土真宗本願寺派の本式数珠の持ち方

二重にした本式数珠を合掌した両手の4本の指から甲へ掛け、房は合わせた両手の甲の真下へ垂らします。

日蓮宗の本式数珠の持ち方

本式数珠の輪を8の字になるように一回ねじり、中指に掛け、二本の房は右手の外側に、三本の房は左手の外側に来るようにします。そのまま合掌をします。(房は手の甲にきます)

曹洞宗・臨済宗の本式数珠の持ち方

二重にした本式数珠を左手の親指と人差し指の間に掛け、そのまま右手を合わせ、合掌します。房は左手の輪に沿って真下へ垂らします。

真言宗の本式数珠の持ち方

本式数珠の輪をストレートに両方の中指にかけて、そのまま合掌します。房は左右それぞれの甲に垂右手・左手側の甲に自然と垂らします。

天台宗の本式数珠の持ち方

本式数珠を人差し指と中指の間に掛け、そのまま合掌します。

他にも親玉を上にして二重に巻き、左手にかけ、そのまま右手を合わせて合掌します。
房は手のひら側に来るよう持つやり方もあります。

派によって持ち方が異なるため、菩提寺に確認するようにしましょう。

お通夜では数珠はいつから持つの?

考える男性

お通夜に参列するときは、お焼香になってから数珠を慌てて取り出す人がいますが、タイミングとして間違っています。お通夜や告別式に参列したときは、はじめから数珠を取り出しておき、終わりまで数珠を手に持っておきます。

焼香時以外では、数珠の房を下にした状態で左手に持つか、左手首に通しておき、お通夜や告別式が終わってから外しましょう。

数珠に関する注意点

数珠に関する注意点

数珠は仏教において重要な仏具のひとつです。扱い方について知らないと、気が付かないうちにマナー違反になることもあるかもしれません。
ここからは、数珠を扱う上でのマナーについて解説していきます。

数珠の貸し借りはしない

数珠は仏具としてだけでなく、お守りとしての役割も果たしています。そのため、他人との共有や貸し借りは避けるべきです。数珠は「念珠」とも呼ばれ、持ち主の念が込められており、持ち主の分身と考えられています。また家族や友人間であっても数珠を共有することは避けるべきです。他人と共有することはマナー違反とされていますので、急な葬儀に備えて予備の数珠を用意しておくことをお勧めします。

数珠の貸し借りがタブーとされる理由は、数珠が「仏と持ち主をつなぐ」ものであり、他人と共有することが適切ではないとされているからです。

葬儀に参列する際に数珠を持参することが一般的ですが、忘れた場合や持っていない場合でも、他人から借りるのではなく、数珠なしで参列する方が望ましいです。急な場合でも、近くの100円ショップやコンビニで購入することができ、葬儀会社でも販売している場合があります。

地域や習慣により数珠の扱い方に違いがあることもありますので、心配な場合は菩提寺に確認すると安心です。数珠の正しいマナーを理解し、適切に扱うことが大切です。

数珠は常に持ち歩く

数珠は仏教において大切な仏具であり、「持ち主のお守り」という意味も込められています。そのため、数珠を床や椅子に置くことは避けるべきです。数珠を小さな仏様と捉え、足元である床やお尻を置く場所である椅子に置くのは不適切とされています。

葬式に参列する際は、数珠を常に持ち歩くように心がけましょう。席を立つときでも、数珠は手に持つか、バッグやポケットに入れるなどして身につけておくことが大切です。

数珠は葬儀用のものを使う

数珠は葬儀用のものを使う

数珠は「葬儀」や「法事」の際に使用することが一般的です。そのため、数珠と一緒に派手なアクセサリーを身につけることは避けるべきです。特に、ファッション性の高いブレスレットやアクセサリーは、葬儀の場にふさわしくありません。例外として許されるのは、「結婚指輪」や「真珠を使った装飾品」程度です。

最近では、パワーストーンを使った数珠やブレスレット風の数珠が人気ですが、これらは日常での使用にとどめ、葬儀や通夜では控えましょう。葬儀の場では、仏式の正式な数珠を使用することが重要です。日常生活を連想させるブレスレットは不適切なので、葬儀用の数珠を必ず用意しましょう。

男性用と女性用の数珠の違い

数珠には明確に男性用・女性用という区別があり、そのため男女間での数珠を共有して使うことはありません。

男性用の略式数珠の場合は玉数が22玉が22玉・20玉・18玉のものが一般的ですが、22玉が現代の標準的なサイズとなっています。1玉のサイズは10~18ミリです。色味は落ち着いた青や緑・茶色・黄が中心となり、素材は黒や茶色系の落ち着いた色味の「縞黒檀(しまこくたん)」「瑪瑙(めのう)」などが人気を集めています。

女性用の略式数珠の場合は玉数は22玉・20玉・18玉が基本であり、1玉サイズは6ミリ・7ミリ・8ミリが基本となりが7ミリのものが標準のサイズとされています。色味はピンク・紫・水色など明るい色味のものを選ぶ方が多く、素材は淡いピンクの「紅水晶」「珊瑚」・紫色の「アメジスト」・淡い緑の「翡翠」なども人気です。

まとめ

数珠は葬儀には欠かせない仏具の一つですが、普段から使い慣れていないため、いざ葬儀の場で知らず知らずのうちにマナー違反を起こしてしまうことが少なくありません。そのようなことにならないためにも、数珠を取り出すタイミングや基本的な持ち方だけでも理解しておくよいでしょう。