この記事ではエンバーミングが具体的にどのように行われているのを解説します。エンバーミングを選択する判断の材料になれば幸いです。
エンバーミングのやり方
エンバーミングは、故人の遺体を衛生的に保ち、故人らしい姿を残すための一連の専門的な処置です。一般的なエンバーミングの手順は以下のようになります。
1. ご遺体の搬送
まず、安置場所からエンバーミング施設へご遺体を搬送します。専門のエンバーミング施設で処置が行われるため、葬儀社が手配した車で移動します。
2. 消毒・洗浄
ご遺体をエンバーミングテーブルに安置し、着衣を取り除きます。全身の消毒・殺菌を行い、鼻腔や口腔なども丁寧に洗浄し、顔の表情や髪の毛を整えます。肌には保湿剤などを使用して、自然な見た目を保ちます。
3. 防腐保全処置
動脈と静脈に小さな切開を施し、動脈から防腐液を注入し、静脈から血液を排出します。この際、身体全体にマッサージを行いながら防腐液を行き渡らせることで、腐敗を抑制し、顔色にも生気が戻ります。また、胸部と腹部に残っている体液や腐敗物質を吸引し、再度防腐液を注入します。
4. 切開部分の縫合と修復
注入が完了したら、切開した箇所を丁寧に縫合します。事故や病気などによる外傷がある場合には、できるだけ元の状態に修復し、遺族が安心して故人と対面できるよう整えます。
5. 再度の洗浄と乾燥
全身を洗浄してから、タオルで水分を拭き取り、髪を乾かします。
6. 着付けと化粧
ご家族が希望する衣装に着替えさせ、故人らしい姿に仕上げます。ご要望に応じて自然なメイクを施し、生前の写真を参考にすることもあります。
7. 納棺と搬送
最後にご遺体を棺に納めます。エンバーミングが完了したご遺体は、葬儀場やご自宅に搬送され、安置されます。
以上がエンバーミングの一般的な流れです。処置の所要時間は通常3~4時間程度で、搬送時間を含めると半日ほどかかることが多いです。
完了後の状態と管理
エンバーミングが完了すると、遺体は衛生的に保たれ、外観も整えられます。エンバーミング後は、遺体を適切な温度と湿度で管理する必要があります。
遺体の管理には、専用の施設や、遺族の自宅などがあります。遺族は、エンバーミング後の遺体の管理方法について、エンバーミング業者から説明を受ける必要があります。
エンバーミングの受付の流れ
1. 必要書類と準備物の用意
エンバーミング処置の申し込みには以下の書類が必要です。
- エンバーミング依頼書:原則として2親等以内のご家族の署名が必要です。
- 死亡診断書または死体検案書の写し また、ご遺族の希望で故人に着せる衣服や、生前の姿を確認するための写真もご用意いただくと、より希望に沿った処置が可能です。
2. 申し込みと説明
葬儀社にエンバーミングを依頼する際、故人の状態や治療歴などの情報を確認させていただきます。ご遺体の状態や感染症の有無によっては、エンバーミングが適さない場合もあります。また、同意書類を提出いただく前に、処置内容や注意点についても詳細に説明いたします。
3. エンバーミング施設への搬送
必要書類が整い同意が確認されると、安置場所からエンバーミング施設へご遺体を搬送します。処置は、専用設備を備えたエンバーミング施設で行われ、一般的に3時間ほどかかります。
エンバーミングの注意点
エンバーミングは、一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)の基準に基づき、認定された技術者が適切な環境下で行います(専用施設での実施)。処置には、2親等以内のご遺族の署名による同意が必要で、反対の意思が示された場合には実施いたしません。
また、海外搬送を除き、死亡後50日を超えた遺体には保全処置を行うことができません。万が一、処置に問題が生じた場合は、IFSAの消費者相談委員会に報告が可能です。
まとめ
エンバーミングは、故人を美しく、安らかにお見送りするための選択肢のひとつです。エンバーミングのことを理解し、故人との最後のお別れの時間を悔いが残らないようにしましょう。
エンバーミングについてよくある質問
エンバーミングは、完全に復元することは出来ませんが、ほとんどの場合でかなりのレベルまで復元することが可能です。
ごく稀に、肌の色が変わることがあります。生前に服用していた薬剤が体内に残っていた場合に、エンバーミング保全液の成分と化学反応を起こし、変色が生じることがあります。また、体内の水分量が少ない方は、乾燥が進行することで変色が見られることもあります。状況に合わせてお化粧を施すことで対応することができます。
エンバーミング処置施設を所有されている葬儀社に依頼する方法が一般的です。エンバーミング処置を単体で行っている業者もあり、処置施設を所有していない葬儀社は専門業者へ委託するケースもあります。
ご逝去後、できるだけ早く対応することで処置の効果が高まります。エンバーミングを行う際には、事前に所定のエンバーミング処置同意書、および死亡診断書(死体検案書)のコピーの2つの書類が必要になり、ご家族からのエンバーミング処置同意書への承諾が必要です。
概ね平均すると処置開始から3時間程度が目安となります。ただし、生前の個々の状態に作用されるため、明確な終了予定時間をお伝えすることは出来ません。
IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)の自主基準により、日本国内では原則として50日以内限度としています。平均的には、10日前後の保全を行う場合がほとんどです。